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那覇地方裁判所 平成6年(ワ)28号 判決

原告

横山友美

横山欣也

原告兼右両名法定代理人親権者母

横山とみ子

右三名訴訟代理人弁護士

大田朝章

右訴訟復代理人弁護士

島袋秀勝

被告

沖縄医療生活協同組合

右代表者理事

仲西常雄

右訴訟代理人弁護士

仲山忠克

主文

一  被告は、原告横山とみ子に対し金二〇六五万一三九〇円、同横山友美及び同横山欣也に対し各金八九七万五六九五円並びにこれらに対する平成四年七月一六日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、これを五分し、その一を原告らの負担とし、その余は被告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告横山とみ子に対し金二七三七万六五二五円、同横山友美及び同横山欣也に対し各金一二三三万八二六二円並びにこれらに対する平成四年七月一六日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  当事者

(一) 原告横山とみ子(以下「原告とみ子」という。)は亡横山博信(以下「博信」という。)の妻、同横山友美(以下「原告友美」という。)は同人の長女、同横山欣也(以下「原告欣也」という。)は同人の長男である。

(二) 被告は、組合員の健康の保持、増進と疾病の治療に必要な施設を設けて利用に供する事業などを目的とする組合である。

2  本件事故の発生

博信は、平成四年七月初旬ころから、被告が経営する中部協同病院(以下「被告病院」という。)に入院中であったが、同月一五日に、同病院の担当医師(以下「担当医師」という。)が博信に胃瘻造設術を施すにあたり、誤ってその腹部内の血管(動脈)に穿刺針を刺入したため、博信は、同月一六日、腹腔内出血による出血性ショックにより死亡した。

3  被告の責任原因

博信の死亡は、担当医師の過失を原因とする本件事故によるものであり、本件事故は被告の業務の執行中に惹起されたものであるから、被告は、使用者として、民法七一五条一項により、その損害について賠償する責任がある。

4  損害

(一) 逸失利益

金二七三五万三〇五〇円

(1) 博信は、本件事故当時、第一級障害者として、国から、国民年金法三〇条に基づく障害基礎年金(以下「障害基礎年金」という。)として年間金一三二万四八〇〇円(子供二人の分加給)、厚生年金保険法四七条に基づく障害厚生年金(以下「障害厚生年金」という。)として年間金一二〇万〇九〇〇円(妻の分加給)の合計年間金二五二万五七〇〇円を受給していた(以下、障害基礎年金と障害厚生年金を合わせて「障害年金」という。)。そして、博信は、本件事故当時、満四七歳であり、本件事故がなければ、三一年(平均余命)は生存していたから、その生活費割合を三〇パーセントとしてこれを控除し、新ホフマン係数(18.4214)により中間利息を控除して、将来得べかりし年金額を算定すると、その現価は、金三二五六万八八五〇円となる。

(2) 仮に障害年金受給権の喪失が逸失利益といえないとしても、原告らは、博信の受給する障害年金を基盤として生計を維持してきたものであるから、原告らは博信から扶養を受ける権利を有していたところ、右権利が本件事故により侵害されたのであるから、原告らは右権利の喪失による損害の賠償を請求できるというべきであり、その損害額は、障害年金受給権の喪失による額と概ね同額である。

(3) ただし、原告らは、博信が死亡した平成四年七月一六日の翌月の同年八月から現在まで、国から、国民年金法三七条に基づく遺族基礎年金(以下「遺族基礎年金」という。)として年間金一一四万三五〇〇円、厚生年金保険法五八条に基づく遺族厚生年金(以下「遺族厚生年金」という。)として年間金五九万五一〇〇円の合計年間金一七三万八六〇〇円を受給しており(以下、遺族基礎年金と遺族厚生年金を合わせて「遺族年金」という。)、博信の死亡の日から本件訴訟の第一審口頭弁論終結の日である平成七年七月一一日までに原告らが受給し又は受給することが確定している遺族年金の額は、平成四年八月分から平成七年七月分までの金五二一万五八〇〇円である。

すると、博信の逸失利益は、前記障害年金の現価金三二五六万八八五〇円から右遺族年金の受給額金五二一万五八〇〇円を控除した金二七三五万三〇五〇円となる。

(二) 慰謝料合計金二二〇〇万円

(1) 博信は、被告が経営する病院の担当医師の重大な過失により悲惨な死に追いやられ、原告友美及び原告欣也の成長を楽しみにしていたこと等を考えると、博信本人の慰謝料として金一〇〇〇万円が相当である。

(2) 原告とみ子は、一家の支柱を失い、本件事故当時に中学生であった原告友美及び小学生であった原告欣也を抱えて茫然自失の状態にあり、その固有の慰謝料として金六〇〇万円が相当である。

(3) 原告友美及び原告欣也は、心から慕っていた父を一瞬にして奪われ、その悲しみは筆舌に尽くせないものがあり、その固有の慰謝料として各金三〇〇万円が相当である。

(三) 葬儀費用 金一二〇万円

原告とみ子は、博信のための葬儀費用として、金一二〇万円を要した。

(四) 弁護士費用 金一五〇万円原告とみ子は、弁護士費用として、金一五〇万円を要する。

5  相続

(一) 原告とみ子は、博信の死亡により、博信本人の慰謝料金一〇〇〇万円及び逸失利益金二七三五万三〇五〇円の合計金三七三五万三〇五〇円の二分の一に当たる金一八六七万六五二五円を相続した。

(二) 原告友美及び原告欣也は、博信の死亡により、右金三七三五万三〇五〇円の各四分の一に当たる各金九三三万八二六二円を各相続した。

6  結論

よって、被告に対し、原告とみ子は、前記相続分金一八六七万六五二五円のほか、その固有の慰謝料金六〇〇万円、葬儀費用金一二〇万円及び弁護士費用金一五〇万円の合計金二七三七万六五二五円並びにこれに対する本件事故の日の翌日である平成四年七月一六日から各支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを、原告友美及び原告欣也は、前記各相続分金九三三万八二六二円及び固有の各慰謝料各金三〇〇万円の各合計金一二三三万八二六二円並びに右同様平成四年七月一六日から各支払済みに至るまで右同率の割合による各遅延損害金の支払いを求める。

二  請求原因に対する認否及び被告の主張

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2の事実は認める。

3  同3は認める。

4(一)  同4の(一)のうち、博信が障害年金(第一級)を受給していた事実は不知。その余については、否認ないし争う。

障害基礎年金は、定額化されていること、その額は障害の等級に応じて差異が設けられていること、受給権者によって生計を維持していた子の存在、数によって加算されていること等に鑑みれば、掛金との対価的な関係はなく、もっぱら生活保護を目的とした性格を有しており、逸失利益性はないというべきであり、また、障害厚生年金は、加入期間の長短に関係なく初診日前に障害基礎年金を受給できる条件に該当していれば受給できること、その額は障害認定日の前月までの加入期間の平均標準報酬月額の一〇〇〇分の7.5に厚生年金の加入月数を掛けて算出されるが、加入月数が三〇〇月(二五年)未満のときは三〇〇月として計算されること、障害の等級に応じて差異が設けられていること、受給権者によって生計を維持していた六五歳未満の配偶者が存する場合には加算されること等に鑑みれば、掛金との対価的な関係は著しく希薄化されており、被保険者及びその被扶養者の生活保障としての性格が極めて強く、これも逸失利益性は否定されるべきである。

また、損害論に関する労働能力喪失説によれば、労働能力の喪失と年金の受給権の喪失は無関係であるから、障害年金の喪失をもって損害の発生と認めることはできないというべきである。

かりに、右年金が逸失利益に該当するとしても、その算出に当たっては、次のことが考慮されるべきである。①博信の病状に照らせば、博信の余命は通常人より短期間であったであろうことは十分に予測しうることは医学的にも社会通念上も是認しうるところであり、余命期間は一五年とするのが妥当である。②生活費は、実態に即して考慮すれば、一日当たり、食費として金一〇〇〇円、近親者による付添看護費として金五〇〇〇円とすべきであり、そうすると、生活費控除は年額金二一九万円となる。これらをもとに、博信の逸失利益の現価を算出すると、次のとおり、金三六八万六二五四円となる。

(252万5700円−219万円)×10.9808(15年の新ホフマン係数)=368万6254円

さらに、博信の死亡により、原告とみ子は妻として、原告友美及び原告欣也は一八歳未満の子として、それぞれ遺族年金を受給しており、それらの存続及び履行は、現実に履行された場合と同視しうる程度に確実視されるところであるから、これらについては、口頭弁論終結時までに受給することが確定しているものに限らず、将来発生するものについても損益相殺の対象とすべきである。

(二)  同4の(二)は争う。

原告ら主張の慰謝料は、健康な成人男性を前提としたものである。しかし、慰謝料は精神的損害を賠償するものであるところ、それは被害者の地位、健康状態、余命期間等によって差異があることは、社会的に是認されている。したがって、博信の本件事故発生時の健康状態(ほぼ寝たきりの状態であった)、将来の改善の見込みの困難性及び一家の支柱としての機能喪失等の事情を斜酌すれば、博信の死亡に伴う慰謝料については、大幅な減額がなされてしかるべきである。

(三)  同4の(三)は認める。

(四)  同4の(四)は争う。

5  同5は争う。

第三  証拠

本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録の記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  請求原因1ないし3については、当事者間に争いがない。

二  そこで、本件における損害について判断する。

1  逸失利益

(一)(1)  いずれも成立に争いのない甲第一ないし第三号証、原告横山とみ子本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を総合すれば、博信は、昭和二〇年一月一日生まれの男子で、本件事故当時、満四七歳であったこと、博信は、本件事故当時、第一級障害者として、国から、障害基礎年金として年間金一三二万四八〇〇円(子供二人の分加給)と障害厚生年金として年間金一二〇万九〇〇円(妻の分加給)の合計年間金二五二万五七〇〇円の障害年金を受給していたこと、原告らの本件事故当時における生計は、右障害年金により維持されていたこと、博信は、本件事故によって死亡し、それにより、右各年金の受給権を喪失したこと、以上の事実が認められる。

(2) そこで、障害者が他人の不法行為により死亡したため、それまで受給してきた障害年金の受給権を喪失した場合、障害者が将来受けるべき障害年金を逸失利益として加害者に対し損害賠償の請求ができるか否かについて検討する。

第一に、障害年金は、当該障害者に対して損失補償ないし生活保障を与えることを目的とするものであるとともに、その者の収入に生計を依存している家族に対する関係においても、同一の機能を営むものと認められるから、右年金の受給権者が支給実施機関との関係においては当該障害者に限られるという意味では一身専属的権利といい得るものの、右年金の生活保障としての機能は障害者の一身に専属するものではない。

第二に、逸失利益といい得るためには、不法行為法上保護に値する財産権といい得るものでなければならないところ、障害年金は、生涯にわたって法令で定められた額を継続的に支給される権利であって、受給の蓋然性が高度であり、かつ、内容も一定であるから、不法行為法上保護に値するというべきである(これに対し、生活保護受給権は、生活保護法四条、六一条、七七条等の規定から明らかなように、生涯にわたる受給の蓋然性が高度とはいえず、その内容も常に変動する性格のものであるから、逸失利益性を認めるのは困難であろう。)。

このような障害年金の受給権が他人の違法な行為によって喪失させられた以上は、死亡した障害者の得べかりし障害年金は逸失利益として当然に賠償の対象になると解すべきである。

したがって、相続人は相続により右損害賠償請求権を取得し、加害者に対して右賠償を請求することができると解するのが相当である。

この点について、被告は、障害年金については逸失利益性がないと主張し、その根拠として掛金との対価関係がないか或いは著しく希薄であることを挙げているが、障害年金が右のとおり障害者に生計を依存する家族に対する関係においても生活保障としての機能を有しており、不法行為法上保護に値する財産権としての性格を有すると解される以上、掛金との対価性の多少にかかわらず、逸失利益性を認めるべきである。

さらに、被告は、逸失利益における損害を労働能力の喪失とのみ捉え、障害年金は労働能力と無関係であるとして逸失利益性を否定するが、不法行為制度の目的は損害の填補、公正な配分であるから、労働能力喪失によらない財産権上の損害を逸失利益から排除するのは、右不法行為制度の趣旨から妥当とはいえない。

(3) そして、障害年金は被害者が生存しているかぎり支給されるものであるから、その算定に当たっては余命期間を基準とするのが相当であるところ、前記認定のとおり、博信は満四七歳で死亡しており、本件事故時である平成四年簡易生命表によると四七歳の男子の平均余命は31.20年であることは当裁判所に顕著な事実であるから、余命を三一年として計算するのが相当である(なお、被告は、博信の余命期間は一五年とするのが妥当である旨主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。)。

(4) また、障害年金は、これによって受給権者及びその家族の生計の維持が予定されているものであるから、その算定に当たっては、博信の死亡により支出を免れた生活費を控除するのが相当であるところ、原告とみ子が博信の妻であり、原告友美及び原告欣也がそれぞれ同人の子であることは当事者間に争いがなく、また、証人高嶺朝広の証言及び原告横山とみ子の本人尋問の結果によれば、博信は、平成元年九月に脳内出血で倒れ、平成三年一〇月以降、被告病院に三回入院したが、その際の博信の状態は、脳内出血の後遺症のためにほとんど寝たきりで、着脱衣及び食事には介助が必要であったこと、将来的にも独立して生活するまでの改善は困難と考えられていたことが認められ、これらの事情を総合考慮すると、博信の生活費として収入の五〇パーセントを控除するのが相当である。

(5) したがって、以上の事情を基礎とし、新ホフマン係数(18.4214)により中間利息を控除して算定すると、博信の得べかりし前記年金の現価は、次のとおり、金二三二六万三四六四円となる。

(252万5700円×0.5×18.4214=2326万3464円)

(二)  ところで、成立に争いのない甲第四号証及び原告横山とみ子の本人尋問の結果によれば、原告らは、平成四年七月から、遺族基礎年金として年間金一一四万三五〇〇円、遺族厚生年金として年間金五九万五一〇〇円の合計年間金一七三万八六〇〇円の遺族年金を受給していることが認められる。

一般に、不法行為と同一の原因によって被害者の相続人が第三者に対して損害と同質性を有する利益を内容とする債権を取得した場合は、公平の見地から、当該債権が現実に履行されたとき又はこれと同視しうる程度にその存続及び履行が確実である限り、これを加害者の賠償すべき損害額から控除するのが相当である(最高裁平成五年三月二四日大法廷判決・民集四七巻四号三〇三九頁参照)。

そして、障害年金は、前記したように、当該障害者に対して損失補償ないし生活保障を与えることを目的とするとともに、その者の収入に生計を依存している家族に対する関係においても、同一の機能を営むものと認められるところ、障害年金の受給者が死亡した場合にその遺族に対して支給される遺族年金も、障害年金の受給者の収入により生計を維持していた遺族に対する損失補償ないし生活保障の目的をもって給付されるものであるから、障害年金とその目的及び機能において同質性を有することは明らかである。

したがって、死亡した者からその得べかりし障害年金相当の損害賠償請求権を相続した遺族が遺族年金の支給を受ける権利を取得したときは、遺族の加害者に対する損害賠償請求債権額の算定にあたっては、遺族年金が現実に履行されたとき又はこれと同視しうる程度にその存続及び履行が確実である限り、その額を請求債権額から控除すべきこととなる。

被告は、その範囲につき、遺族年金として既に支給された分のみならず将来支給される分も控除すべきであると主張する。

しかしながら、国民年金法及び厚生年金保険法によれば、障害年金の受給者の相続人が遺族年金の受給権を取得した場合においても、その者の婚姻あるいは死亡などによって遺族年金の受給権の喪失が予定されているから(国民年金法四〇条、厚生年金保険法六三条)、既に支給を受けることが確定した遺族年金については、現実に履行され給権の喪失が予定されているから(国民年金法四〇条、厚生金保険法六三条)、既に支給を受けることが確定した遣族金については、現実に履行された場合と同視しうる程度にその存続が確実であるということができるとしても、支給を受けることがいまだ確定していない遺族年金については、現実に履行されたと同視しうる程度にその存続が確実であるということはできない。

そして、国民年金法及び厚生年金保険法によれば、年金は支給すべき事由が生じた月の翌月から支給を停止すべき事由が生じた月まで支給することとされており(国民年金法一八条、厚生年金保険法三六条)、原告らについて遺族年金の支給を停止すべき事由が発生した旨の主張のない本件においては、第一審口頭弁論終結の日である平成七年八月八日現在で(原告はこれを平成七年七月一一日とするが、同年八月八日であることは本件記録上明らかである。)、原告らが同年八月分までの遺族年金の支給を受けることが確定していたといえる。

したがって、本件においては、支給が開始された平成四年八月分から平成七年八月分までの遺族年金を請求債権額から控除すべきところ、前掲の甲第四号証及び原告横山とみ子の本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨を総合すれば、その額は合計金五三六万〇六八三円であることが認められ(右認定を左右するに足る証拠はない。)、よって、これを請求債権額から控除すべきこととなる。

(三)  以上を総合すると、本件の逸失利益は、次のとおり、金一七九〇万二七人一円となる。

(二三二六万三四六四円−五三六万〇六八三円=一七九〇万二七八一円)

2  慰謝料

博信及び原告らの年齢、性別、本件事故の態様、本件事故当時の博信の健康状態、原告らと博信との身分関係、本件事故後の原告らの生活状況、その他諸般の事情を総合考慮すると、博信に対する慰謝料は金八〇〇万円、原告とみ子に対する慰謝料は金五〇〇万円、原告友美及び原告欣也に対する慰謝料は各二五〇万円とするのが相当である。

3  原告らの相続

原告とみ子が博信の妻であり、原告友美及び原告欣也がそれぞれ同人の子であることは当事者間に争いがないから、博信の死亡により、前記1の逸失利益及び前記2の博信に対する慰謝料についての損害賠償請求権を、法定相続分に従って、原告とみ子はその二分の一、原告友美及び原告欣也は各その四分の一、それぞれ承継取得したことが認められる。

4  葬儀費用

原告とみ子が、博信のための葬儀費用として、金一二〇万円を要したことは当事者間に争いがない。

5  弁護士費用

弁論の全趣旨によれば、原告らが本件訴訟の提起及び追行を原告ら代理人に委任し、その報酬を原告らが支払うことになっていることが認められるところ、本件事案の内容、審理経過、認容額その他諸般の事情を考慮すると、被告の本件違法行為と相当因果関係のある損害として被告に賠償を求めうる弁護士費用の額は、金一五〇万円とするのが相当である。

三  結論

以上のとおりであって、原告とみ子は、民法七一五条一項により、被告に対し、金二〇六五万一三九〇円及びこれに対する不法行為の日の翌日である平成四年七月一六日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める権利があり、原告友美及び原告欣也は、被告に対し、各金八九七万五六九五円及びこれに対する前同様の各遅延損害金の支払いを求める権利がある。

よって、原告らの請求は、右権利がある限度で理由があるから、これを認容し、その余の請求はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九二条本文、九三条一項を、仮執行宣言について同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官稲葉耶季 裁判官近藤昌昭 裁判官平塚浩司)

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